全天空撮影技術で広がった山頂パノラマ写真制作のストーリー

山頂に立った時の視界360°の世界は、山登りしない人にとっても魅力的な情景ではないでしょうか。今回は、山頂パノラマ写真や全天球写真の取り組みを振り返ります。

2016年5月
塩尻市立図書館(えんぱーく)で行われた、霧訪山の魅力を紹介する企画展に協力した時に、会場で山頂を表現しようと会のメンバーから提案が出ました。そこでまず、撮影担当の古川さんが、霧訪山頂で写真を撮影し、続いてエンジニアの須木さんが、苦労を重ね画像を合成し360度のパノラマ画像に仕立てました。その後、長尺プリンターで長さ12.4mのポスターを印刷し、最後に丸めて直径4mの円筒形に仕立てて会場に飾りました。円筒の中心でパノラマ写真を見ることで、山頂気分を感じられる展示になったと思います。
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2017年9月
画像処理技術が飛躍的に進歩し、ボタンひとつで360°の画像を撮影できる全天球カメラが庶民でも購入できる価格帯になり注目され始めました。新技術に目がない中澤さんが、発売間もない「RICOH THETA SC」を手に入れ、奥穂高岳山頂の360°全天球画像を撮ってきました。山頂から見える山の名前はエンジニアの須木さんが山岳ソフト「カシミール3D」を使って確認し掲載しました。

この全天球画像はパソコンやスマホで見れるだけではありません。VRゴーグルでも使えます。ゴーグルの向きに合わせて画像が動くモードにすれば、よりリアルに山頂を体験できる仮想現実の世界を提供することが可能です。

2017年10月
全天球コンテンツを増やして展示の幅を広げようと、我々のホームマウンテンである霧訪山山頂での撮影を行いました。この頃はまだ、画像編集まで手が回らず、足元には撮影者の影が映りこんでいます。
2017年12月
塩尻市立図書館での展示がきっかけで、松本市主催のイベント「山岳フォーラム」に出展が決まりました。フォーラムでは、奥穂高岳・霧訪山・八ヶ岳(たしか天狗岳)山頂の全天球画像をVRゴーグルで紹介し、多くの取材を受けました。テレビや新聞にもインパクトのある取材写真が掲載されました。

2018年5月
「山岳フォーラム」の展示がきっかけで、2018年夏に上高地インフォメーションセンターで企画展を開催することになりました。全天球画像のコンテンツをさらに増やそうと上高地にゆかりのある山に登っては撮影を繰り返しました。下は蝶ヶ岳の山頂です。
2018年7月~8月
上高地インフォメーションセンターで企画展示が行われました。ここでは、蝶ヶ岳と焼岳の全天球画像を切り出し、長さ7mのポスターにして飾りました。奥穂高岳の画像は、塩尻市立図書館で展示したときと同じ直径4mの円筒状にして展示。VRゴーグルは、スマホの電池の消費が激しく、会のメンバーがいる時だけの紹介となりました。
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立体地形図の会には、星好きのメンバーもいるので、上高地の夜の全天球動画の撮影にも挑戦しました。山での夜の撮影は、ISO感度、気温低下によるカメラへの水滴付着、電池の消耗が著しく激しくなるなど様々な困難がおこります。おばけも出そうで怖いです。今後、何らかの対策を講じて挑戦を続けたいと思っています。また、夜9時をすぎても騒いでいたので他の登山客の方に怒られもしました(その折は大変申し訳ございませんでした)。

※画面をクリックしてご覧ください。また、スマホで見る場合は空を見上げてごらんください(スマホの向きと連動するため)。
2018年9月
上高地インフォメーションセンター展示の際、雨の日に来た登山者の方から、「槍ヶ岳に登りに来たけど雨で断念した。槍ヶ岳のVR映像があれば、ありがたかった」と言われたので、早速槍ヶ岳に行って撮影しました。この全天球画像は、2018年10月に塩尻市立図書館で開催した企画展で長さ3.2mのポスターにして展示もしました。
2019年9月
「茶臼山プロジェクト」のきっかけにもつながる塩尻最高峰「茶臼山」に登ることになり、南アルプス+富士山が映る全天球画像を撮影しました。この画像は、11月に開催した「しおじりまちづくりフェスティバル」に長さ3.2mパノラマのポスターにして紹介したと同時に、VRゴーグルでも全天球画像を楽しんでもらいました。
2021年3月
コロナ禍で様々な活動が制限される中、この年の松本市主催イベント「山岳フォーラム」では、今までの全天球データをクラウド上に保存し、QRコードとNFCでデータを参加者自身のスマホに取り込み楽しんでもらう参加型の企画展としました。この時は、事前に冬季閉鎖中の上高地大正池に赴き全天球画像を撮影してコンテンツに加えました。
2022年10月
コロナ収束に向け先が見え始めたこのころ、茶臼山プロジェクト推進のため、メンバーの2人が新潟県の妙高山近の茶臼山に登りました。ここの茶臼山は、丘のような場所で、気を付けて歩かないと通り過ぎてしまう山でした。そこで2人は、帰り道に妙高山に登り、そこからの全天球画像を撮って帰ってきました。
最後に
パノラマ画像は、それだけで圧倒されますが、さらに親しみを持ってもらうため、山の名前を画像に合成しました。ここで活躍したのが山岳ソフト「カシミール3D」です。山の名前の同定には、このソフトの持っている山岳展望機能を使っています。すばらしいソフトを無償で提供される「Dan杉本」さんには、この場を借りて深く感謝いたします。

【カシミール3D】https://www.kashmir3d.com/