プロジェクションマッピング作品制作の試行錯誤と寄り道ストーリー
今回は立体地形図の会がこれまでつくった、プロジェクションマッピング作品の制作過程を振り返ります。
映像投影は、これまで制作した立体模型の活用を検討する中で産声をあげました。動きのある立体模型ができたら面白いね!というリーダー鈴木さんの発想から始まり、映像担当須木さん、大道具担当赤津さんらでアイデアを具体化する中で投影を試みることになりました。思い返してみれば、当時まだ一般的ではなかったプロジェクションマッピングにチャレンジするという大胆不敵なことでした。
まず、えんぱーくにあるコルクボードタイプ1.9m×1.2mの立体模型に映像投影を試みました。大道具担当赤津さん所有のプロジェクターをつかってトライし、なんとか投影できたものの、画像と立体地形図の位置を合わせるのが至難の業でした。山肌の緑が印象的で立体地形図上に映像を投影する意味を改めて感じました。
都度生じる焦点距離問題を解決するため、超短焦点プロジェクタを入手しましたが、斜めからの投影では山のピーク位置がずれてしまいます。また、立体模型の高低差から山陰で映像が投影されない場所が生じます。ピーク位置は投影画像を変形補正して解決しましたが、1つのプロジェクターで高低のある広い面積に投影することの難しさに直面してしまいました。
それでも何とか投影を実現させたい気持ちから、既に取り組んでいた3Dプリンター技術を活用し、高さ方向の凸凹を抑えた模型を3Dプリンターで作り投影を試みることにしました。サイズは、えんぱーくにあるコルクタイプの積層式立体模型(1.9m×1.2m)の約半分弱にあたる、88cm×54cm(22cm×27cmシート8枚)、高さは1.5倍デフォルメです。
3Dプリンターで立体模型を作る間、大道具担当の赤津さんが、模型をセットする台や、プロジェクターを取り付ける専用装置を開発しました。折り畳み可能な形状で、キャスターをつけるなどの工夫も施し、持ち運び可能なプロジェクションマッピング装置が完成しました。
塩尻市の模型に投影する映像も完成し、テスト上映をしていたところ、上高地インフォメーションセンターでの展示の話が持ち上がりました。
上高地での展示は、穂高・槍を含んだ立体模型に山や観光情報や四季の移ろいの映像を投影するものでした。赤津さん開発のプロジェクションマッピング装置を活用するとともに、新たな模型や映像を制作し、上高地で上映しました。上高地バージョンはその後、塩尻図書館や下西条公民館、塩尻市民文化祭、山岳フォーラムでも上映しました。
このころになると、松本市主催のイベント「山岳フォーラム」の常連出展者となりました。せっかくなので、山岳フォーラム用の新たなコンテンツを作ろうと、3Dプリンターで長野県全体の立体地図模型を製作し、県内の山や山にまつわる映像を上映しようと制作していましたが、丁度コロナ禍で、山岳フォーラムが中止となってしまいました。
作成していたコンテンツは、しばらく休眠したあと、図書館展示や、翌年復活した山岳フォーラムで上映しました。
かなりの紆余曲折を経て、模型や映像も大量につくり色んな映像投影にチャレンジしてきましたが、これには塩尻の枠を超えて関係組織やプロジェクションマッピングに興味を持った人たちの後押しがあったからだと思います。この場を借りて、深く感謝いたします。特に図書館には3Dプリンターによる立体地図模型製作やその展示などで、いろいろな助力・協力をいただきました。どうもありがとうございました。
プロジェクションマッピングなどの投影技術は日進月歩です。また、プロジェクターも最近は光学系を介さないレーザープロジェクターが実用化されています。投影方法も様々な楽しいものが提案されています。機会があれば、新しい技術を取り入れたものにチャレンジしていきたいと思っています。